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ホーム > お・い・し・い・エッセイ No.159 世界の菓子切手 村岡安廣 7

世界のお菓子切手(7)香港の饅頭・点心・ケーキ

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切手の左右に中国と西洋の文化が平行して描かれている  

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ケーキが登場する切手展小型シート

 イスラム圏と並ぶ菓子の二大源流といわれる中国ですが、菓子切手の発行は日本と同様にあまり見られず、ポルトガル領であったマカオがこの分野では目立った存在でした。
 中国に返還された香港が21世紀に入ってようやく食文化を取り上げ始め、2002年10月14日発行の普通切手と2004年1月30日発行の切手展小型シートに菓子が登場しました。
 普通切手は中国と西洋の文化を並行して紹介するデザインで、16種の図案のうち4種が食文化に因むものとなっています。
 菓子は2ドル切手にケーキと饅頭が描かれており、この饅頭は月餅のように見受けられます。月餅は秋の名月を見ながら食する習慣から、中国のみならず世界各地のチャイナタウンで9月の1ヵ月間、販売される焼菓子です。十数年前訪問したシンガポールの中華街でも、数多くの店で各種各様のその店自慢の月餅が製造され、列をつくって購入する客の姿が見られました。
 1ドル40セント切手には、パンと点心が描かれています。点心は中間食的な料理の一種で、昼食を指す場合もあり、我が国では茶受けや寺院における正食の前の軽い料理をも意味するところとなっています。通常このような蒸し饅頭が多いことから、この切手においても菓子に近い蒸し饅頭であると推察されます。
 英国領であった香港の歴史を背景にしたデザインの切手展小型シートには、ケーキも登場しています。周辺に中国菓子らしき食品が数点並び、「食は広州にあり」という言葉どおりのこの地の伝統を示しています。

村岡安廣