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ホーム > お・い・し・い・エッセイ No.165 世界の菓子切手 村岡安廣 13

世界の菓子切手 村岡安廣(13)和菓子のふるさと(中国)

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稲作発祥と見られる河姆渡遺跡。日本の稲作もここが源流と考えられる。

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北宋(960−1127)の都のにぎわいを描き、中国最高の傑作図巻と言われる「清明上河図」は、
北京故宮博物院に所蔵されている。

 日本と同じく、菓子の切手がほとんど発行されない国が中国です。和菓子の由来の大半は中国にあると言われるほどの菓子大国ですが、菓子が切手に取り上げられる機会は少なく、ほとんど見当たりません。
 そんな中国の郵便切手のなかで、今回は菓子の原料となる米の、世界最古の栽培例が出土した「河姆渡遺跡」の切手と、さまざまな食文化が起ったとされる北宋時代の都・開封の春の情景が描かれた「清明上河図」の切手を紹介します。
 1996年、河姆渡遺跡の切手が発行されました。7千年〜5千年前に長江流域に優れた文明があったことを示す大量の出土品から、稲作農業に用いられた道具の二十分*切手、木造建築の五十分切手、木の櫂の百分切手、鳥と太陽の文様の器の二百三十分切手の4種を紹介したもの
です。
 また、清明上河図の切手は、2004年に小型シートの形で発行されました。首都としての活気にあふれる街の賑わいと、大河に船が浮かび、大勢の人々が岸辺や橋を行き交うありさまがダイナミックに描かれています。
 砂糖などの貴重な食糧は、当時からこのような大きな船で運送されました。饅頭や餅など、この時代を中心に日本に伝わったとされる和菓子の原点は、ここにあったのです。

*「分」は中国の貨幣単位で、100分が1元にあたります(100分=10角=1元)。現在、分はほとんど流通しなくなりましたが、この切手の発行当時は経済成長が現在ほどではなかったため、元単位でなく分単位で額面表示がなされていました。

村岡安廣