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ホーム > お・い・し・い・エッセイ 世界の菓子切手 村岡安廣(22)世界最初の菓子切手 No.175

世界の菓子切手 村岡安廣(22)世界最初の菓子切手

オーストリアで1949年に発行された児童保護基金切手のうちの1枚。切手の絵柄の額縁部分の右サイドに書かれている「GEBURTSTAG」が誕生日という意味のドイツ語。

 日本をはじめとした東アジアでは年賀切手の発行が盛んですが、欧米ではクリスマス切手が続々と登場しています。その中で、数多くの菓子がクリスマスの大切な食として、様々な意匠に用いられてきました。
 鶏卵素麺は、わが国では茶道に主菓子として使用される伝統菓子ですが、ポルトガルでは黄金の輝きをもつクリスマスケーキの飾りとして大切な役割を担っています。
 さて、今回はバースデーケーキをテーマとした傑作切手、しかも世界初の菓子切手の紹介です。
 1949年にオーストリアが発行した児童保護基金切手「幸せな子どもの情景」4種の切手のうちの1枚「子どもとバースデーケーキ」が、菓子切手の最初とされています。
 ケーキの上には1本のローソク、子どもの手にはしっかり握られた小さな匙。「さあ、ローソクを消してケーキをどうぞ」という声が聞こえてくるような光景です。
 オーストリアでは華やかな宮廷の歴史により、様々な芸術文化、生活文化が花開きました。首都ウィーンは芸術の都と言われ、カフェ文化が今なお街の中に息づいています。オーストリア各地にも様々な菓子が存在し、とりわけウィーンではザッハートルテをはじめとする数多くの銘菓が楽しまれています。
 チョコレートケーキであるザッハートルテは、約200年前のウィーン会議の折に発案され、ウィーン菓子の代名詞となっている菓子です。この切手に描かれているバースデーケーキも、形状や色合いからザッハートルテをモチーフとしたものと見受けられます。
 第二次世界大戦により悲哀を味わったオーストリアですが、菓子という生活文化、凹版印刷切手という芸術文化のいずれにもあふれる誇りと自信が、すばらしい菓子切手の傑作を生み出したのです。

ポルトガルの年末年始と鶏卵素麺  国民の9割以上がカトリック教徒であるポルトガルでは、クリスマスは特別な日。イブの夜は家族でテーブルを囲んでご馳走を食べ、さらに何種類ものお菓子を用意します。なかでも代表的なお菓子が、鶏卵素麺でデコレーションしたボーロ・レイ(王様のケーキ)や、卵黄と鶏卵素麺でヤツメウナギの形をかたどったランブレイアというユニークなケーキ。これらをクリスマスから新年にかけて、毎日ゆっくりと食べていきます。ポルトガルの鶏卵素麺はFios de ovos(フィオス・デ・オーヴォシュ)と言い、直訳すると玉子の糸。輝くような黄色が、ポルトガルの年末年始を彩ります。 1999年、ポルトガルで発行された切手「修道院の菓子シリーズ」より。(本エッセイの第1回/153号でご紹介しました。全国銘菓のホームページでご覧になれます)

村岡安廣