南蛮菓子のふるさとポルトガル。わが国で17世紀に著された『南蛮料理書』には、「はん」としてパンの製法が紹介されています。また、ポルトガルにはカステラの原型といわれている菓子があり「パン・デ・ロー」と称されています。この名前は、ローマカソリックの総本山があるイタリアの丸い「パン」と、ふわふわとした感触の東洋の絹織物の「ろ(絽)」という言葉を組み合わせたものといわれており、海洋帝国ポルトガルの威光が示されています。
近年の資料では、日本で夏季に着用する絹織物の着物の「絽」は中国語の「羅」の訳語であると記されています。この説をとれば、パン・デ・ローの「ロー」は日本語で、ポルトガル伝統の菓子名の中に日本が存在しているということになります。
ポルトガルで1999年と2000年に発行された菓子切手シリーズ(連載の第1回/『あじわい153号』で紹介しました)から10年後となる2009年、パンの切手が登場しました。いずれも小麦のグルテンの粘りが伝わってくる独特のおいしさを持つポルトガル伝統のパンが、写真の力でさらに魅力を増しています。
ポルトガルのさまざまな地方の、それぞれ自慢の「パン」比べが、ここに登場しました。
村岡安廣