江戸時代、南蛮菓子は日本中に広まり、砂糖菓子への関心が大いに高まりました。
長崎を中心として伝えられた南蛮菓子は、直接ポルトガルやスペインからではなく、中国の人々によってその技術がもたらされたと言われています。
その中国におけるポルトガル文化の中心地がマカオ。ポルトガルの植民地で1999年に中国へ返還されましたが、ポルトガルの食文化、とりわけ菓子の文化が今も強く根づいています。
昨年11月にはマカオ・フードフェスティバル10周年を記念して5種の切手が発行され、その中に再びエッグタルトが登場しました*。
マカオにあるコロアネ島の教会は、長らくフランシスコ・ザビエルの右腕の遺骨が安置されていたことで知られていますが、この教会そばの菓子店がエッグタルトの専門店として名声を誇っていて、今では中国周辺の東アジアの銘菓となっています。
今回発行された切手には菓子の技術者も描かれ、エッグタルトを本格的に紹介する、すばらしい表現がなされています。
なお、ポルトガルでは、首都リスボン最大の修道院であるジェロニモス修道院を中心としたべレム地区の銘菓が、エッグタルト=パスティス・デ・ベレム=パスティス・デ・ナタです。この地区のカフェの名店では千夜一夜物語のアラビアの王宮の雰囲気の中でコーヒーとエッグタルトが楽しめます。
村岡安廣