韓国の宮廷料理は、テレビドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」で一躍有名になりましたが、なかでも米を原料とした餅料理の水準の高さは特筆すべきものがあります。わが国では菓子の一つとされる餅も、韓国では料理の一つであり、キムチに次ぐ伝統的食文化として大切に守り伝えられてきました。
近年、韓国では伝統文化をテーマとした切手が数多く発行されており、伝統食を主題とした韓国料理シリーズも平成13年から発行が始まりました。第1回のキムチに続いて第2回は餅が取り上げられ、4種の餅が伝統の器に盛られて登場しています。
青磁の皿に盛られている白と緑の餅は「チョルピン」といい、花模様がかたどられています。通常、このような花模様や卍模様は木型が用いられますが、韓国では磁器の型があり、東アジアでは珍しい菓子型として知られています。
磁器型の歴史は百年とも千年ともいわれ、明確な資料は少ないのですが、わが国ではこの磁器型を茶道の蓋置きとして使用する慣わしがあります。形状、大きさが蓋置きとして適度なため、茶道具の一つとして使われてきたのです。菓子作りの道具がこうした形で珍重される稀有な例だといえるでしょう。
きな粉がまぶしてある餅は「インジョン」といい、チョルピンと同様に結婚式など祝いの席に出されます。
小豆をふんだんに用いて餅とサンドイッチ状に仕上げた「シルットク」は、祝いや祈願の折に用いられてきました。古くは五穀豊穣を祈り、現在では転居の際に新居の安全を祈って供えられています。わが国では高麗渡りの菓子とされ、京都や名古屋で製造されている「村雨」や、鹿児島の「高麗餅(これもち)」の原型が、このシルットクであるといわれています。
「ソンピョン」は、うるち米に胡麻や小豆、栗などを混ぜ、松の葉の上で蒸して作る餡入り餅です。松の葉を使うことから“松片(ソンピョン)”の名が生まれました。旧暦の8月15日の秋夕(しゅうせき)の日は、このソンピョンが盛んに作られ、一般家庭でもそれぞれ独特の味を競って作ります。なお、旧暦8月 15日が中秋の名月に近いことから、わが国では中国の月餅ではなく、このソンピョンの影響を受けて月見団子が供されるという説もあります。うるち米の餅菓子は朝鮮半島文化の影響が濃いといわれる宮崎県、佐賀県に、今もなお伝統菓子として残されています。
村岡安廣
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