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ホーム > お・い・し・い・エッセイ 「広告付き葉書」をご存知ですか? No.177

「広告付き葉書」をご存知ですか? 吉田榮一

月世界本舗(富山県) 両口屋是清(愛知県)
月世界本舗(富山県)
昭和57年5月1日発行。当舗所蔵の「月宮殿の図」を意匠に、菓子銘のみを配して、菓子の文化的側面を表現。
両口屋是清(愛知県)
昭和56年12月1日発行。代表銘菓の銘と優雅な意匠をそのまま意匠に活かして。

村岡総本舗(佐賀県) 柴舟小出(北海道) 六花亭(北海道)
村岡総本舗(佐賀県)
昭和57年3月1日発行。店の菓子作りの真摯な姿勢を訴える「羊羹手づくり」の絵をモチーフに。
柴舟小出(北海道)
昭和56年12月1日発行。加賀の紋どころ「梅」を紅梅の俳画にして、菓子どころ金沢をイメージ。
六花亭(北海道)
昭和57年2月1日発行。代表銘菓を大胆に配置。「ふきのとう」のパッケージが、まさしく春を呼び込む。

 皆様は表面の下部3分の1に企業や団体の広告が印刷されている「広告付き葉書」を受け取ったり、買われたりしたことがありますか。
 広告付き葉書は、現在も郵便局で「エコーはがき」という名前で売られていますが、常時発行されているわけではない上、地域限定発売が多く、さらに一般の葉書よりも5円安い45円で売られているため大量購入される方もいて、発売初日に売り切れることもしばしば。でも、機会があれば、ぜひ一度、手にとってみてください。地方色豊かなものも多く、なかなか楽しいものです。
 広告付き葉書の第1号発行は、昭和56年7月のこと。郵便料金値上げによる郵便離れを防ぐためと増収をねらった郵政省の苦肉の策だったのですが、見事に当たって一大ブームを巻き起こしました。
 当時の値段は35円(当時、普通葉書は40円)。全国版と地域版があり、全国版は大企業がスポンサーとなって1種類で1千万枚前後が全国の郵便局で発売されました。一方、地域版は地方の有名企業や団体がスポンサーとなって5万枚〜100万枚が指定地域の郵便局で販売されました。
 全国銘菓の加盟店がスポンサーになったものも多く、今回は、その中から昭和56〜58年に発売されたものをご紹介いたします。いずれも老舗らしい品格を備えながら、各店の社風もそれぞれ漂わせているような気がいたします。ひととき、お楽しみいただけたら幸いです。

鶴屋吉信(京都府) 五勝手屋本舗(北海道) 千秋庵(北海道)
鶴屋吉信(京都府)
昭和57年2月1日発行。京都らしい愛らしい女の子の意匠。翌年も別の図案で発行されている。
五勝手屋本舗(北海道)
昭和58年6月1日発行。江差追分の譜面が、地域性を強く感じさせる。江差追分会との共同発行。
千秋庵(北海道)
昭和57年6月1日発行。代表銘菓2点に「いま、さっぽろから」という斬新なコピーを添えて。

お菓子の香梅(熊本県) 九重本舗 玉澤(宮城県) なごみの米屋(千葉県)
お菓子の香梅(熊本県)
昭和57年12月1日発行。和菓子を楽しむ人々を描いた絵が美しい。
九重本舗 玉澤(宮城県)
昭和57年8月2日発行。仙台の伝統と風土が生んだ、誇り高き銘菓をそのまま意匠に。
なごみの米屋(千葉県)
昭和58年6月1日発行。暑中見舞いに使われたのだろうか。翌年にも別デザインで発行。

柏屋(福島県) 小布施堂(長野県) 龜屋(埼玉県)
柏屋(福島県)
昭和58年12月1日発行。湯気の中に見えている薄皮饅頭のおいしそうなこと。お店の温かな雰囲気までが伝わってくる。
小布施堂(長野県)
昭和56年10月1日発行。歴代のご当主が愛され、お店のシンボルともなっている北斎の「傘風子図」を意匠に。
龜屋(埼玉県)
昭和58年11月1日発行。6代目のご当主が描かれた重厚な蔵造りの本店の絵がすばらしい。

吉田榮一(よしだ・えいいち)

富山県富山市にある「月世界本舗」3代目当主。昭和12年生まれ。長年、「菓子」をメインテーマにした切手収集を続けており、今回紹介した広告付き葉書もコレクションの一端。